QLOOKアクセス解析

△TOP

★色々な視点★

「つくし?」

「ふぁに?(何?)」

賞味期限が迫った大福を食べながらあたしは答えた。

「チョコレート!今年は道明寺さんにあげるんでしょ?」

もごもご……ごっくん。
大福を急いで飲み込み、優紀に答えた。

「さぁ、どうだろ。あたし、臨時バイト……
バレンタインチョコの売り子するの。
だから、忙しいんだよね〜。稼げる時に稼がないと!」

気合を入れ、鼻息も荒いつくしを見て、
優紀は思いっ切り溜息を吐く。
つくしってば、婚約者よりもバイトを優先なんて……。
信じられないと言うか、つくしらしいと言うか。

「道明寺さんのフィアンセなんだから、
そこまで働かなくてもいいんじゃない?」

「何言ってるのよ、優紀!
あたしが大学通うようになって、
我が家はますます貧乏なんだから!!」

「道明寺さんに少しは頼ったら?」

「絶対嫌!お金に関してはアイツと違って、あたしはシビアなの」

優紀は徐々に迫力を増すつくしにたじたじになりつつ、

「でもさ。道明寺さん、バレンタインすっごく楽しみに
してると思うよ。貰えなかったら、暴れるかもよ?」

「暴れたら、殴って大人しくさせるから心配ないって」

そうじゃなくって……。
鈍いつくしには全く伝わらない。

「バレンタインなんて、チョコレートメーカーの陰謀でしょ。
それに乗せられるのも何か腹立つし!」

「つくしってば、可愛げない事言うね〜」

「大体、道明寺はNYに居るんだよ。アイツ、多忙だし……
そういう事考える余裕はないと思う」

「メッセージカード付けて、手作りチョコ送ってあげれば、 すっごく喜ぶと思うよ」

ともう一押ししてみる。
道明寺さんがとても寂しがり屋なのは
一番つくしが知っている筈。

「それより…優紀は西門さんにあげるの?」

「もっちろん!優紀特製抹茶チョコをね♪」

西門さんの話題を振っただけで、
コロッと変わる優紀ってば、カワイイ♪
と思うつくしだった。

+++++

バレンタイン当日。

団子屋のバイトが終わる頃に

「まーきの」

「あ!花沢 類。どうしたの?」

「牧野に渡したい物があってね」

「渡したい物?」

「ん、コレ」

「わー、綺麗♪花沢 類、有り難う。
でも、何で『スイートピー』なの?」

「牧野の誕生日の花だから」

「へー、そうなんだ。全然知らなかった!」

「バレンタインって、欧米では日本と違って、
女性限定のイベントじゃないんだよ」

「そうなんだ〜。あ!花沢 類、ゴメン!!」

「どうしたの?」

「今からあたし、別んトコでバイトなんだ。
今度、ゆっくり会おうね!またね」

「ちょっと待て!牧野!!」

猛ダッシュするつくしにはその声は届かなかった。

「類、お前、司にそんな事知られたらマズイぞ?」

とあきらが言うと、

「何で?彼女じゃなくても俺、牧野の事好きだもん」

「……それ以上、言うな類」

総二郎の顔が引き攣る。

「しっかし、アイツ、相変わらず、騒々しいな」

「だよな。完全に俺達の存在、スルーだぜ」

「せっかく、イイニュース、知らせに来たのによ」

総二郎とあきらはやれやれとした顔で呟く。

「西門さん!どうしたんですか?」

「優紀ちゃん、久し振り!」

「あの、あたし、西門さんに渡した……」

優紀が話し終える前に総二郎が

「牧野に伝えたい事があったんだけどさ。
アイツ、ドコに行ったか知らない?」

「つくし、道明寺さんにチョコレート、
渡す気無いみたいですよ。」

と優紀が言うと、

「「マジかよ!!?」」

総二郎とあきらがハモる。

「○○デパートの地下で、バレンタインチョコの売り子を
していますよ。稼ぎ時だ、って張り切って」

「ぷくく、牧野らしい」

類の笑いのスイッチが入る。

「あきら君、これは私から気・持・ち・♪」

突然現れた女将さんにあきらの顔が強張る。

「有り難うございます……」

思わず、女将さんからのバレンタインを受け取るあきら。
拒否権はナイ程、女将さんの眼力には迫力が有った。

「お返しはお店のお手伝いでいいからね♪」

「え!?」

「前みたいにキスサービス。あれ、大好評だったから♪」

あきらは呆然となった。

「あきら!」

総二郎の声に我に返ったあきら。

「牧野んトコに行くぞ!」

「あぁ、そうだな。このままだと、俺達が猛獣にやられるし」

「類は来なくていいから」

「えー、何でさ?」

「ややこしくなるから!」

と総二郎がイライラしながら言う。

「ニュースって、何なんですか?」

と優紀。

「司が帰って来んだよ」

「えぇ!!?まさか、つくしからバレンタインチョコを
貰う為、とかじゃないですよね?」

「そのまさか、だよ。司のエネルギー源は牧野だからな。
今日の休日をもぎ取る為に相当頑張ったらしいし」

「早く牧野に伝えないと、俺達にも被害が及ぶ。
と言う事で、俺達急ぐから……げっ!!!」

団子屋の前に黒いリムジンが停止したかと思うと、
そこから司が出て来た。

「よ!お前らも来てたのか」

御機嫌な司に
類と女将さん以外の一同には緊張が走る。

司のカッコを見て、更に引き攣る俺達。

「つ、司…お前、その格好。新郎みてーだぞ?
たかが、バレンタインで…」

総二郎が言うと、

「だから何だよ?」

ジロリと総二郎を睨んだので、すかさずあきらが

「いやいや、無茶苦茶似合うって、褒めてんだよな!総二郎?」

「そ!そうそう」

「あはははははは、司、マジおかしい」

類がますます笑い出す。

類!空気読め、このバカ!!!
ますます司の機嫌が悪くなるだろーが!!!
と、総二郎とあきらが類に眼で合図を送るが、
通じない(通じてるのにスルーが正しいか...)。

「類、笑うな!
ところで、牧野はドコなんだ?」

「ま、牧野は今日は休みらしいんだわ」

と、総二郎が言っている途中に
類が

「牧野、○○デパートの地下でバイトしてるって。
司にチョコ渡す予定ナイみたいだよ」

その場が凍り付く。
誰か、このKY類を消してくれ……頼む。
あきらは願う。

「あんのヤロー!!ぶっ殺す!!!」

司はリモに乗り込んだかと思うと、すぐに行ってしまった。

「何とか被害は免れたな、総二郎」

冷や汗を拭いながら、あきらは言う。

「あぁ、そうだな。後は牧野に任せて、
俺達はデートに勤(いそ)しみますか♪」

「ぶくく、危機迫る表情(カオ)の総二郎とあきらって、笑えるよね!」

「うるせー。お前のせいだろうが!
ワザと、司を煽りやがって」

「類はほっといて、行こうぜ、あきら」

「だな」

総二郎とあきらはデートへ。
類は帰宅(その後は多分、いえ!絶対熟睡)。

「あーーー!!西門さんに渡すの忘れた〜」

と叫ぶ優紀であった。

+++++

○○デパート地下。

「何あれ?ゴッツイ黒服外人達…怖いんだけど」

「あ、でも、あの真ん中に居るのは道明寺 司じゃない?」

店内に居る女性達がヒソヒソと話し出す。

女性達が賑わう場所には非常に不似合いな物騒な団体が
ゾロゾロと店内に入って来ると、自然に道が出来る。

その頃のつくしは

「どうも有り難うございました!!」

とニッコリと微笑み、チョコレートを売っていた。
幸せそうなお客さん達を見ながら、
ちょっぴり物思いにふける。

そう言えば、あたし。まだ一度も道明寺に
バレンタインチョコあげてないな。
道明寺って言うより、あたしってば、
生まれて一度もした事ないじゃん。
パパや進にさえも。
贅沢は敵だ!
チョコを買うお金が有ったら、もっと有意義に使え!が
我が家では当たり前だったしね。

でも、自分も貰った人も幸せな気持ちになれるんだったら、
してもいいかも?来年からしようかな。
道明寺の喜ぶ顔を想像するだけで、何だかほっこりした気持ちになる。

「あの、コレ下さい」

いけない、いけない。
今はバイトに集中しよう!
と気合を入れ直していると……

「この店内の物は全部俺が買い取った!
お前達はさっさと出てけ!!」

はぁ!!?
聞き覚えの有る声と思ったら、
今居る筈の無い、道明寺がコチラを睨みながら、叫んでいる。

この売り場の責任者が拡声器で、

「只今、全商品が売り切れとなりました。
大変申し訳有りませんが閉店致しますので、
お客様は速やかにこのフロアから出て下さいませ」

そう言った後、責任者である藍川さんが
あたしの所にやって来て、

「そう言う訳だから、牧野さん」

「はい??」

「もう帰っていいから。道明寺様の所へ 早く行ってくれないかな? 頼みます!!お願いします!!」

あたしが返事をする暇も与えず、
どんどん背中を押し、あたしを道明寺に押し付けた。
あたしは道明寺の胸に抱き締められる。

「ただいま」

「何がただいまよっっ!!!」

あたしは道明寺の胸を叩き、離れようとする。

「うっせー。いいから来い!」

あたしは道明寺に抱き上げられた。

「離せーーー」

「藍川、ありがとな」

「いえいえ、お買い上げどうも有り難うございます」

藍川は深々とお辞儀した。

リモに乗せられたつくしは

「アンタ!帰って来るなんて、一言も言ってなかったじゃない」

「お前を驚かせようと思ってな♪」

「電話で話す時間も無い位多忙な状況で、何の為に帰って来たのよ」

ったく、コイツは全然分かってない上に可愛くねーな。
俺は怒鳴りたくなるのをグッと我慢し、

「去年貰えなかった物を貰いに来た。分かってるよな?」

「うっ…」

あたしは言葉に詰まる。
去年のバレンタインを思い出す。
道明寺から乱暴な言葉だったけれど、牧野しか有り得ないと言われ、
切なくなりつつもやっぱり嬉しくて。
道明寺が川へ投げた土星のネックレスをやっぱり手放せなくて。
道明寺への思いを再確認した日でもあった。

「なぁ、牧野。俺はチョコが欲しいんじゃねーんだ。
NYに居て、なかなか会えないし。
お前との時間が少しでも欲しいだけなんだよ!」

「うん」

「俺にこんな事言わせんな、バカ女!」

「バカは余計よ!!
あたしだって、会えなくて淋しかった。
仕事と大学が忙しいだろうから、
電話するのも迷惑かなって思っちゃって。
淋しいからそういう事を考える暇が無くなるように
出来る限り限界まで忙しくしてた……」

「お前なぁ、そういう大事な事はきちんと言え!
牧野からの電話だったら、夜中だろーが、
いつでも大歓迎だ。今度から遠慮するなよ?
俺は言ってくれなきゃ分かんねーんだから」

「お前だって忙しいんだから、これ以上忙しくするな!
いいな?身体壊したら、意味ねーんだぞ?
身体壊したら、ただじゃ済まさねぇからな。
牧野んちの生活費も学費も俺が持つぞ?」

「駄目!それは止めて!!
あたしは頼る女にはなりなくないの」

「だったら、約束しろ」

「うん、分かった。 ありがと、道明寺」

+++++

道明寺邸。

「道明寺!キッチン借りていい?」

「あ?いいけどよ。 メシはシェフが用意するぞ?」

「いいから!お願い!!」

「分かった。俺はちょっと仕事が残ってっから、
自室の書斎に居るぞ。終わったら、部屋に来いよ」

「うん」

キッチンに行く途中、タマ先輩に会った。

「つくし、久し振りじゃないか。
ココで何する気だい?」

「あ、タマ先輩。御無沙汰しています。
実は……」

「そうかい。坊ちゃんもさぞ喜ぶだろうよ。 頑張んな」

「有り難うございます」

つくしは準備に取り掛かった。
流石、道明寺家。
何でも揃ってる!材料は高級だし。。。 道明寺は甘い物苦手だから、アレンジして作ろうかな。

約2時間後、完成。

+++++

司の部屋。

道明寺の部屋に入ると、仕事は終わったらしく、ベッドで寝ていた。
忙しいのに無理しちゃって。
アンタこそ、身体壊したらあたしが許さないんだから!
司のクリクリした髪を弄っていると、

「ん…牧野?」

「あ、起こしちゃった?ゴメン」

「いや。んな事より何作ってたんだ?」

「コレ…」

「開けていいか?」

綺麗にラッピングされている箱を開けると、

「チョコレートケーキか。お前の手作り?」

「うん。ザッハトルテ。…アンタんちの材料だけどね。
道明寺、甘い物苦手でしょ?
だから、ちょっとアレンジ(スウィートチョコ→ビターチョコに
変えたり等)して作ってみたの」

「サンキューな。マジで嬉しい」

と笑顔の道明寺。
その笑顔につくしも自然と笑顔になる。

「一緒に食べよーぜ」

「うん!あたし、お茶の用意してくるね」

つくしが切り分けたザッハトルテと紅茶をテーブルに用意し、
向かい合って座る。

「「頂きます」」

「牧野、俺に食わせろよ」

ニヤニヤしながらあたしの方を見る道明寺。

「ったく、しょうがないなー。
はい、あーん」

「うっめぇ!!!」

牧野の手作り、しかも食べさせてもらった……
新婚みたいじゃね??
妄想が暴走しつつあるこの男に気付かないつくしは

「良かった。あたしも食べよ。あ、美味しい♪」

「お前の分は俺が食わせる」

「え、いいって。恥ずかしいじゃん///」

「照れるなよ」

そう言う司は自分のケーキを自分の口の中へ。
そして、いきなりつくしの口を塞ぐ。

!!!!!!

驚いて、つくしの大きな眼が更に大きくなる。
あたしの口の中にはほろ苦いザッハトルテが広がる。

「口移し♪」

「バ、バカッッ!!」

「俺にもしろよ」

「絶対嫌!!!
もう自分で食べなさいよ///」

2人の攻防戦はしばらく続く。。。

道明寺からの口移しは司の分のケーキが終わるまで、
続くのであった。

+++++

「道明寺」

「何だよ」

「不思議に思ってたんだけど、アンタのカッコ、新郎みたい……」

「あいつらと同じ事言うな」

「あいつら?」

「ま、いーから。お前にもドレス用意してるんだぜ」

「えぇ!!?」

道明寺は部屋の内線を取り、

「牧野の準備を今すぐ取り掛かれ」

タマ先輩と使用人さん達が部屋にやって来たかと思うと、
あたしは強制連行される。

お風呂にエステにヘアメイク、そして顔も…。
ドレスアップし、いつものあたしとは別人。

色は上品な薄いピンクで、ワンショルダーのロングドレス。
肩の部分と腰の部分には薔薇の花があしらわれている。
右肩だけで、頼りないじゃないのよ!!
背中は大きく開いてて、スースーするじゃない///

+++++

司の部屋に連れて行かれ、

「お!似合ってんじゃん。
綺麗だ、牧野//////」

つくしを赤くなりながらマジマジと見詰める司。
つくしも赤くなり、

「ありがと/// じゃなくって!ドレスアップして、どうするつもりよ!!?」

「デートに行くんだよ」

「はぁ、この格好で!!?」

「驚く事ねーだろが。
ウェディングドレスは流石に着せられねーから、我慢してくれ。
じゃ、行くぞ」

「ちょっと待ってって!」

あぁ、コイツには『常識』なんてのは通用しないんだった。
アレ、ずっと淋しくって不安だった気持ちが何時の間にか
無くなってるや……。
道明寺にだったら、振り回されてもいいかなーなんて思ってしまう。
バカだけど、あたしへの愛情・優しさは溢れる位伝わって来る。
あたしは道明寺みたいにストレートに表現出来ないけど……
この貴重な時間は大切にしたい。

前を歩く道明寺に思いっ切り抱き付いた。
『道明寺、あたしも愛してるよ』
///いつかちゃんと言葉でも伝えられるようになるからね!

* END *


+ 伝えたい思い +

* 2009/02/14(土) *
※ 『2009年 道明寺 司 Happy Birthday ♪』とは
全く繋がっていません。この話での司は英徳ではなく、
NYの大学に通っています(笑)。 ※


いつもどーり、ツッコミ所が満載です( ̄ー ̄;
例えば、司が全部買い上げたチョコレート(やお菓子)はどうなった、とか?
……ホテルのお茶菓子にでもなったっつー事で。

続編も書けるような内容だなー。。。書きたい気持ちもあったり(?)。
『デート編』☆
あー、でも!年齢制限なお話を書きたくなってしまうので、
予定は未定って事で。
何はともあれ、司とつくし!!お幸せに〜ヽ(=´▽`=)ノ


+ 言い訳(?) +

時間設定:『花男2』
終了後の翌年。